★シンガポール旅行記・1日目//Part5

いざ、シンガポール市内へ

シンガポール・チャンギ国際空港からホテルまでのタクシー車内

タクシー乗り場に行くと、先客はなく、地べた座りの中高年男性軍団に、迎え入れられる。
その中でも、ひときわ眼光鋭いおじさんに、
「タクシー乗り場なら・・・、ここだ。」と、聞いてもいないのに、突然中国語で言われ、
『ここ、タクシー乗り場かな?』という、 無意識の心のささやきを聞かれた思いがし、
とっさに身構える。 が、特にこれ以上関わり合いを持つ気配なく、終了。少々、寂しい。

タクシーは、2台、3台と、どこからともなく現れ、所定の場所に、きりっと整列。
内心『後ろから来る、ちょっと新しい方がいい・・・。』と思ったものの、これも運。
すこし年季の入った、その車内へと進む。

「どこに行きたいんだい?」「コンラッドホテ~ル」
「コンラッ・ホテッ?」「イエス、コンラッドホテ~ル」
「オォ、コンラッ!サンテッ!オーケー、オーケー。」「・・・オーケィ?」

会話から察するに、運転手の方は分かってくれたみたいだが、ふとした疑問が。

サンテって、なんだ・・・。

『あれだけシンガポールを調べたんだ。冷静になれ。きっと何かしら引っかかるだろう。』
そして、中国語のにぎやかなラジオが響く車内で、どうにか精神を集中させ、考える。
『サンテッ、サンテー、センテー、セントー・・・、!!』
『もしかして、セントーサ島!? 大きなマーライオンまで連れて行かれてしまうのかっ!?』
【サンテ】の4段活用進化形が、【セントーサ島】とは、これまたなかなか無理がある、
という事実は一切無視し、 『オーノー、こりゃ大変だっ!とんだ遠回りでっせ、ダンナ!』
と、小さくパニック。

慌てて印刷してあったホテルの予約表を、ゴソゴソとカバンから出すものの、
その存在感を消し、まるで座禅中の僧侶の如く、【無】の表情で座るAriさんが、
外の景色に彷徨っていた視線を、ゆっくりとこちらに向け、眼で必死に訴える。

『それ出すの、今じゃない---。』

確かに、鼻歌まで出てきそうな上機嫌な彼に、その地図を手渡すタイミングは、とうに過ぎた。
自信ありげな彼を信じてみようと思うものの、なかなか不安は拭えない。
そんな緊張感の中、タクシーは南国の植物が脇を固める道路を、軽快なスピードでひた走る。

気持ちの良いあきらめ感が漂うなか、実にくだらないやり取りのみ、繰り返される。
「あの木、南国っぽいね。」「(コクリ)。」「あの木も。」「(コクリ)。」「あの木も。」
- 以下同文。

すると、15分も走ると、見覚えのある建造物が。
「あ、シンガポール・フライヤーだっ!」「イエス、イエス、シンガポール・フライヤー。」
グーグルマップを穴の開くほど見つめたTsumは、なんとなく現在地を把握し、
このタクシーがきちんと市内に向かっていることを、確認。そして、想う。

疑って申し訳ない、運転手のおじさんよ。

そこからは、あっという間に、コンラッド・ホテルに到着。料金もガイドブック通り。
おじさんはホイホイとニコニコ顔で、荷物をトランクから出してくれ、
最後に「バイ、バイ」と手を振ってくれた---。

『あぁぁ、いい人ではないかぁぁあ。私は、こんな善人を疑ったのかぁあ!』
と、自分の心の狭さに嘆いている横で、
Ariさんが、運転手のおじさんに手を振り、いつまでもタクシーを見送っている。
車内では(真っ向からおじさんを疑い)押し黙っていた、あの、あのAriさんとは思えない。

人間とは、実に、図々しいものだ。

ちなみに、サンテは、コンラッドホテル近くにあるサンテックシティモールのこと。
勉強不足、お恥ずかしい。

シンガポール・チャンギ空港

さらば、チャンギ。

しばしの別れ。3日後に、また会おう。

シンガポール・チャンギ国際空港・タクシー乗り場

タクシー乗り場。

タクシーは安いので、空港からの利用価値は高い、とガイドにあったが、思いのほか利用者は少ない。地下鉄で市内に出る人の方が、多いのだろうか。

コンラッド・セントニアル・シンガポール到着

コンラッド・セントニアル・シンガポール

いつまでも、タクシーのおじさんに手を振るAriさんを、
怪訝そうに、 見つめていたベルボーイさんが、とうとうしびれを切らし、
「(いい加減)こちらへどうぞ。」と、案内してくれた。
一歩足を踏み入れれば、そこはまさに、”ザ・豪華”な空間。
この旅、どこへ行っても【場違い感】にさいなまれる。
しかし、これでもビジネスクラスに乗ってきた端くれ。
ここは、堂々と立ち居振舞わなければならない。ズンズンズンと歩みを進めると、
4、5歩進んだところで、先ほどのボーイさんに呼び止められる。「そっちじゃないよ。」と。
眼を凝らして良く見ると、その先には、もう一つの出口。

『初めて来ました。そして、緊張感が満載です。』と、
うっかり、しっかり態度で示すことになった。

チェックインは、笑顔がさわやかな男性シンガポリアンが担当してくれた。
「Tsum様ですね。パスポート、よろしいですか?」と、通常のやり取り。
すると彼、パスポートを見つめた後、チラッと他のスタッフを見る。
カウンターには他にも3人ほどスタッフがいたが、
その中の一人の女性と、やたらにチラチラ、チラチラと見合う。
・・・なんなんだ、この二人の不自然な視線のやり取りは。いわゆる、そういう仲なのか?
ここぞとばかりに、余計な想像力を働かせる。

すると、「シンガポールは初めてですか?」と、女性のスタッフが話しかけてきた。
『ぉぉ、いま、それ、完璧に脳内で日本語に訳したっ!』と、一瞬、自分の語学力に酔ったが、
それもそのはず、ネームタグを見ると、日本の方だった。
なるほどね、そういうことね、と、ここまでの経緯を納得。
そこからは、その女性が話をしながら、さりげなく業務交代。
とても感じの良い、ステキな方で、自然と会話が弾む。
ちらりと横に視線を向けると、あの男性スタッフの顔には、

『最初から、君が対応すれば良かったではないか。』と、
マッキーペンの太いほう使いました、とばかりに鮮明に書かかれている。

君のその意見、もっともだ。

シャワーと小腹

コンラッド・セントニアル・シンガポールのプール

残念ながら、(ちょっぴり)期待していたアーリーチェックインは、あいにく満室とのことで、
定時のチェックインとなったが、
「シャワーは、ご利用なさいますか?朝食はいかがいたしますか?」
と、矢次にうれしい質問。 ご好意に甘え、シャワーを使わせていただくことに。
朝食のオファーは、はちきれんばかりの腹部をさすりながら、
「いまは、お腹がいっぱいで・・・。」と、丁寧にお断り。
「もし気が変わりましたら、遠慮なくおっしゃってくださいね。」の、笑顔で付け加えられた、
優しい一言。この心遣いに、あとで大いに救われることになる。

シャワーは、プールサイド近くのジムにあるものを、利用させていただいた。
決して【シャワーを浴びる行為】がメインな場所ではなく、
【ロッカールームの中に、シャワーブース、作りました】といった趣。
タオルはロッカーの中にあり、シャンプー類も備え付けで置いてある。
ササッと浴びるには、充分。

だが、 ロッカールーム自体非常に小さく、脱衣所的な場所もない。
ので、シャワーを浴びるには、

A. 生まれたばかりの姿を、
   ロッカールームに居合わせた皆様にさらす。
B. 濡れる危険性を重々承知の上で、
   服やタオルをシャワーのドアにかけて置く。

どっちを選ぶかは・・・、あなた次第だ。

ひとシャワー終え、プールサイドから、シンガポールフライヤーを背にした写真を撮り、
朝の清々しい空気を吸い込むと、あることに気がつく。
そう、胃袋の片すみに、ちょっとしたすき間があることを・・・。
お腹をさすって満腹感を示してから、まだ一時間も経たぬうちに、胃袋が意地を見せた。
その努力には、報いねばならない。
「これは、せっかくだからコーヒーでもいただくかね?」と、
【せっかく】という言葉の多用で、どうにか恥ずかしさをこまかす。

コンラッド・セントニアル・シンガポール・プール脇のロッカールーム

ロッカーへと続く道。

写真で見ると、とても暗いが、実際はもっとステキ。

コンラッド・セントニアル・シンガポール・プール脇のロッカールーム

ロッカーへと続く道のバラ。

実際はもっとステキ、パート2。

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